飯塚病院リハビリテーション部

医療従事者の皆様へ

組織構成と特徴

Organizational structure and characteristics

■ 特徴

 当リハビリテーション部は、総合リハビリテーション承認施設の認定を受け、理学療法部門、作業療法部門、言語聴覚療法部門に分かれて患者さんへリハビリテーションを提供しています。病気や障害があっても、住み慣れた地域で、自分らしく暮らしたいという、ひとりひとりの思いを大切に、運動機能やADL能力が低下した状態にある方々に対し、様々な手段を用いて、運動機能やADL能力の回復を目的にリハビリテーションを行います。当院では、入院早期からリハビリ介入を行い、医師・看護師・他部門と連携して365日リハビリテーションの提供を行っています。また、退院時には、退院前訪問指導として、患者さんの生活環境を実際に訪問し、家庭復帰や社会復帰を支援して、生活の質の向上を行っています。認定療法士や各専門分野に特化したスタッフも在籍しており、学会での発表や研修会の講師、研究分野にも積極的に取り組み、高度なリハビリテーションを患者さんに提供するようにしています。

専門職種と各チームの特徴

Specialties and Team characteristics

理学療法士

Physical Therapist
  • 重症チーム

     理学療法・重症チームは、8名のスタッフで集中治療室(ICU)と2つの救急病棟(H2/E4)およびE4HCU病棟を担当しています。人工呼吸管理や持続緩徐式血液濾過透析(CHDF)などの高度医療管理中から、多職種とのチーム医療により、早期離床・リハビリテーションや腹臥位療法などの呼吸ケアにも携わっています。重症リハビリにおいてFSS-ICU(基本動作の自立度評価)を評価として主に考え、進捗を確認しています。今年度は臨床指標(QI)の考えを踏襲し、チームを上げて患者さんの回復度合いが少しでも目で見てわかるように取り組んでいます。

  • 心血管チーム

     理学療法・心血管チームでは、毎週水曜日17時より心臓リハビリテーションカンファレンスを多職種(医師・看護師・臨床検査技師・理学療法士)で実施し、入院心臓リハビリテーション患者・外来心臓リハビリテーション患者の情報共有を実施しています。また、当院での治療を終えられた方が向かう、転院先の病院や診療所との連携は必要不可欠であり、近隣済生会飯塚嘉穂病院・児嶋病院と連携しながら、地域連携の継続を図っています。

  • 呼吸チーム

     理学療法・呼吸チームが担当する領域は内科から外科領域と多岐にわたり、主に肺炎やCOPDに加え、間質性肺炎や肺癌などの呼吸器疾患、肝臓癌や肺癌を中心とした外科術前後、複合疾患を有する患者を担当し、急性期~在宅復帰までを経験できます。経験豊富なスタッフが多数在籍し、業務改善や臨床研究にも積極的に取り組んでいます。また、その他の特色として、心理的安全性の高い働きやすい環境を目指して様々な活動に取り組んでいます。

  • 中枢チーム

     理学療法・中枢チームは、SCU入室の超急性期脳卒中患者や脳外科術後早期の患者、神経難病患者などを対象とした、急性期から慢性期まで多岐にわたる脳神経系疾患のリハビリテーションに携わっています。また、リハビリテーション科の四肢痙縮に対するボツリヌス療法や装具外来では、医師と連携して評価・治療を行い、運動療法を提供しています。

  • 運動器チーム

     理学療法・運動器チームでは、主に人工関節置換術、骨接合術などの術後や多発外傷、関節疾患等の患者さんに対して理学療法を行っています。入院では術前評価、術後急性期から在宅復帰まで、一部入院から継続での外来リハビリも行っています。また、他職種での術前カンファレンス・退院前訪問指導・手術見学・学会発表など様々な取り組みを行っています。

作業療法士

Occupational Therapist
  • 中枢チーム

     作業療法・中枢チームでは、救急搬送された脳卒中・脳炎・交通外傷や手術目的の脳腫瘍・神経筋疾患など幅広い疾患に対応しています。入院初日の超急性期からリハビリを開始しており、超急性期~亜急性期まで、リスク管理を行いながら介入し、早期に機能改善、ADL(日常生活で行われる動作)・上肢機能・高次脳機能障害を中心に取り組んでおり、他部門と連携しながら心身の回復過程に沿った治療介入を行っています。特に急性期では食べることは最も重要とされており、食事動作や環境調整など食事場面への直接的な介入が必要な方への関わりに力を入れています。

  • 運動器チーム

     作業療法・運動器チームでは、当院整形外科にて上肢疾患(骨折、腱損傷、末梢神経障害)の手術後の患者さんに対して、主治医だけでなく他職種とも連携し、手術前・手術後より介入することで、疼痛および合併症の予防・指導を行っています。手術後は早期に退院されるので、患部の管理方法や疾患に応じた運動指導を実施し、関節が硬くなるなどの2次的合併症予防の教育をします。また、退院後は、必要に応じて外来リハビリにつなげていきます。

  • がんチーム

     作業療法・がんチームでは、手術後2日目より早期に離床させるために痛みを緩和しながらADL自立に向けた介入 ②化学療法・放射線療法後の副作用症状を考慮し、全身状態に合わせて介入 ③無菌室での抗がん剤治療中で全身状態に合せての介入 ④乳がん・婦人科がん手術後のリンパ浮腫予防など様々な場面でリハビリ介入をしています。その中で、トータルペイン(身体的苦痛・心理的苦痛・社会的苦痛・スピリチュアルの側面)の多面的、多層的な理解に努め、病期別(予防的・回復的・維持的・緩和的)に合わせて介入し、ICFの概念である活動や参加の視点を含めて取り組んでいます。

  • 小児チーム

     作業療法・小児チームでは、外来リハビリで運動発達・言語発達遅滞、自閉スペクトラム症や注意欠如多動症などの神経発達症、脳性麻痺や重症心身障害児など医療的ケアが必要な子どもさんに対して、小児科医師の指示のもと個別訓練を行っています。また、入院リハビリでは、重症心身障害児の肺炎や痙攣重積発作などの小児救急で入院した子どもさんに、呼吸療法や特性にあわせた身体機能への介入、環境調整など他部門と連携しながら介入しています。

言語聴覚士

Speech Language Hearing Therapist
  • 言語聴覚士チーム

     言語聴覚士(ST)は、嚥下機能や言語・高次脳機能に対して評価・訓練を行っております。当院は、3次救急まで対応し患者の病状や嚥下障害も多岐に渡っており、リハビリテーション科や耳鼻咽喉科と連携を図りながら、患者が早期に経口摂取を開始出来る様に努めております。その他にも、失語症や構音障害などの言語障害、記憶や注意などの高次脳機能障害に対しても社会・自宅復帰を常に考えながらリハビリを提供しております。また、外来の方の嚥下機能の相談にもリハビリテーション科が対応し、嚥下機能評価や施設職員への指導も行っております。現在、小児分野においても吃音や構音障害、言語発達障害に対して外来リハビリを行っております。

医療事務・リハビリ助手

Medical assistant & Rehabilitation assistant
  • 医療事務・リハビリ助手

     事務業務は主に、診療報酬の請求・修正、レセプト業務、入院手続きやリハビリ外来管理を行っております。またリハビリ助手は、診療補助として、セラピストの治療場面での物品準備や片付け、移乗動作や歩行練習の補助などを行っています。医療事務、リハビリ助手は患者さんと医療スタッフをつなぎ、患者さんに寄り添い、医療スタッフの支えにもなっています。

専門・認定療法士、有資格者( 2023年4月時点 )

Qualification

専門理学療法士:内部障害
1名
認定理学療法士:管理・運営
1名
認定理学療法士:脳卒中
2名
認定理学療法士:運動器
4名
認定理学療法士:循環器
4名
認定理学療法士:呼吸
8名
認定理学療法士:代謝
1名
がんリハ研修修了
39名
心臓リハビリテーション指導士
10名
3学会合同呼吸療法認定士
24名
NST専門療法士
1名
腎臓リハビリテーション指導士
1名
臨床指導者研修終了
19名
Bobath(成人):基礎講習会修了
5名
Bobath(成人):上級講習会修了
2名
Bobath(小児):基礎講習会修了
1名
Bobath(小児):基礎講習会修了
1名
地域糖尿病療養指導士
2名
介護支援専門員
3名
呼吸ケア指導士(初級)
1名

人材育成

Human Resource Development

■ ローテーションシステム・研修制度

 入職後は初期研修として4年間のローテーションシステムにより様々な疾患を経験できます。例えば、理学療法士では、運動器・脳血管・呼吸器・循環器の全ての疾患を4年間で経験できます。部内の教育システムは「屋根瓦式教育」を採用しており、グループ内に経験年数の異なる3~5名の小さなチームを構成して教育を行っています。この診療チームは「縦ライン」と呼ばれており、「教え、教えられながら」診療を進めていきます。各診療チームでは1週間に1回の頻度で業務内に相談会も開催しています。

 ローテーション期間が終わった後にも様々なキャリアアップの道が開かれています。例えば、下記に示す“教育のスペシャリスト”を目指すプログラムや、院内にある臨床研究支援室と共同しての臨床研究プログラムもその一つです。また、連携している回復期病院や訪問リハビリテーション施設へ出向するプログラムも準備されており、ジェネラリストを目指すこともできます。現在は明確なコース分けはありませんが、個人のキャリアにあわせて、飯塚病院だからこそできる経験をたくさん積むことができます。

■ 充実のe-learningコンテンツ

 e-learningコンテンツを使用して「いつでもどこでも学習」できるような工夫がなされています。部内にはe-learning構築部会が存在しており、100以上ある全てのコンテンツを閲覧することが出来ます。コンテンツは『e-Learning Professional』の資格を持つスタッフが監修して数だけでなく質の向上にも取り組んでいます。また、e-learningと臨床経験の融合に向けた取り組みも進行中です。

■ 教育するスタッフを育成するプログラム

 当院のリハビリテーション部では他にはない教育者育成プログラムが存在します。臨床教育者研修会では、教育理論や基盤に基づいた“根拠ある教育”を実践できるスタッフを育成するプログラムを実施しています。研修は、実際の臨床教育と紐付けられており、学生教育、縦ライン(上記参照)リーダーやグループ内研修会の立案など多くの教育経験を積むことができます。また、飯塚病院独自のシステムとして麻生リハビリテーション大学校との連携により、養成校で学生に対しての授業を行う経験が積めるプログラムも準備されております。

院外セラピストに向けた教育活動

Human resource training for out-of-hospital therapists

 飯塚病院では院外のセラピストに向けた研修会や連携、社会活動にも力を入れております。具体的には、書籍やポジションペーパーの執筆、学会での座長や研修会の講師など様々な活動を行っているスタッフが在籍しております。
2022年度からは呼吸器分野にて認定理学療法士教育カリキュラム教育施設の認可を受けて、19名の修了者を輩出しております。2023年度からは、さらに循環器、運動器を加えた3分野で認可を受けて活動していく予定です。

臨床研究活動

Clinical Research Activities

 当院では、研究者を育成するプログラムも存在しています。ワークショップでは、「リサーチクエッションの作成方法」や「系統的検索」のやり方などのレクチャーも行われています。研究企画会議では、部内の臨床研究部会にて吟味されて論文執筆経験のあるスタッフからのアドバイスも受けられます。研究企画会議の地点で、臨床研究の経験がある担当スタッフが一人つき、メンターとして学会発表を始めとして論文作成まで支援します。また、みなさんの不安が多く専門的な知識が必要な統計解析は、院内の臨床研究支援室と協力することで間違いのない統計処理が可能です。